作家養成コラム
作家養成コラム
2019.04.25
創作・執筆のヒント心斎橋大学では、1年に1度作品集を制作致します。
開校33年を迎えるにあたり、修了制作作品集を「炎心」と改めました。
受講生の皆様から頂戴した候補には、藤本義一先生が付けられたスクール名「心斎橋大学」から「心」を引き継いだものが多く、書き手の「心」が込められた作品集でありたいと検討し、難波利三先生にご相談したところ、藤本義一先生のお言葉「蟻一匹炎天下」(厳しい環境の中でも、一匹でも耐える)から「炎」を頂いて、「炎心」とご提案下さいました。
受講生の皆様と先生方の「心」が合わさり、素敵な名が付けられたと思います。
今はまだ、燃えていない透明なものの集まりかもしれませんが、皆様の執筆意欲と才能は、少々の風が吹いても消えない輝く炎になることでしょう。
フィクション部門に58作、エッセイ・ノンフィクション部門に33作の計91作品の提出がありました。
作者名の無い状態の原稿を講師陣が審査・投票し、各部門の優秀作品を選出致しました。
フィクション部門:最優秀賞1作、優秀賞2作、奨励賞3作
エッセイ・ノンフィクション部門:最優秀賞1作、優秀賞1作、奨励賞2作
クリックすると、作品をお読み頂けます。講評は、このページ下部をご覧下さい。
クリックすると、作品をお読み頂けます。講評は、このページ下部をご覧下さい。
受賞作に寄せられた講評の一部をご紹介致します。
「海外出張中のベテラン社員と間抜けな後輩のショートショートですが、描写がうまく、何となくイタリアの空港シーンの映画を見せられているようです。制限枚数内での盛り上がり方も堂に入っていて、エンディングもドキリとさせる洒落っ気があります。恰も空港のざわめきが聴こえて来るようで、都会的な短篇にぴったりな内容です。この種の短篇作者の腕としてはなかなかのものです。小説の骨法を身に着けている作者と読みました。」
「ドジな部下のバカさかげんがよく描けている。ラストのオチが利いていて面白い。」
「作者は同行した安山のドジぶりに呆れ果てる。帰りの空港では、パスポートを老人にすられたと言う。ところが老人は義手だった。作者のいいかげんにせいという気持ちと安山の子犬のように縋り付く様がよく表れている。やっとのことで乗り込んだ飛行機。観光客の話し声が聞こえる。「あの空港、義手のすりが出るんですって!」程よいユーモアとオチが良い。」
「おもしろく読めた。マンマミーア!のタイトル“なんてこった!”的意味で使ったとしたら、一般的には伝わりづらいかも。」
「命に対する思い。傍観者という目線で書けた点を評価。時間経過の中での想いの存続にも共感できる。」
「児童虐待の家の近隣に住む人の心理をうまく表現している。タイトルも良い。何もしなかった者の罪が鋭く浮かび上がっている。」
「短い中に、ぎくっとさせるものがあり、よくまとまっていた。」
「鍋の目線でそれを扱う彼女の人生を浮かび上がらせる。発想が新鮮で、両者が一心同体のように歩んだ日々が、しんみりとした余韻を残す。」
「非常に洒落た短篇です。擬人法で高級な鍋を主人公にしたのが実に新鮮です。その鍋を通じて、平和で少し知的そうな中産階級らしい家庭が描かれ、一行だけのセリフが非常に効果的です。読んでいるだけで、好ましいある家庭の姿が、まざまざと瞼に浮かんで来ます。なんの変哲もない素材から、ひとつのドラマを浮かび上がらせる作者の腕は、大したものと感嘆します。」
「本来、エッセイとは「私が」何について考察し、独自のエピソードを交えて論じ、結果として、読み手の腑に落ちさせるような結論へ導く小論です。この規範にそって選べば、「古びないもの」が最もその条件を満たしていると思え、内容的にも中々高尚的です。通俗性は低いものの、他の作品に比べ、考えるという意味で、一歩先んじています。」
「日常の中での“捨てる”という作業の中で去来する思いが良く書けていて共感できる。タイトルの「古びないもの」も妙あり。」
「日常の生活のある作業から観念の世界へ入っていく文章が他の人たちの作品の中で光っていた。「古びた洋服……」の一行が蛇足です。」
「淡々とした文章で書き手の思考がとてもわかりやすい。静かに伝わってくる味わいが好印象。これぞエッセイと思った。」
「日常の行為からの、イメージの広がりが楽しい。新聞の擬人化の視点が面白い。読後のスッキリ感。」
「エッセイというよりも短編小説の味わい。作り過ぎの気がしないでもないが、静から動へ激変する無残な場面をここまで書き出す筆力は見事。相当な腕前。ラストも決まっている。」
「緊迫感のある文章で、風呂敷という目付けも素晴らしい。終行の「最期に母は風呂敷に何を包むのだろうかと考えていた」がいい余韻を残した。」
「人生を終える時、最期に人は何を包むのだろうか。その思考に読者をうまく誘ってゆく作品だ。最後の2行がこの作品を引き締めている。」
「あまりにもタイミングを計ったように事件と遭遇したことが、このエッセイをノンフィクションであるのか、フィクションであるのか分からなくしているが、いずれにせよ生と死を強く印象付けたという点で評価できる。」
「実体験の描写と共に母を思う深い愛情がよく描かれていた。文章もとても上手い。何度か読み返して一位と決めた。」