小説家、放送作家、脚本家、児童文学作家、絵本作家の養成スクール[大阪/心斎橋大学]

今回は、エッセイに対する、講師の指導（講評）・チェックポイントをご紹介します。
◎講師によるアドバイス箇所に番号・アルファベット、
アドバイス内容は赤字で表示します。

講評：文章・エッセイコース　藤田富美恵　先生

①『四十個の目玉』興味をひく良い題名です
山口有香子

②背中を見られている。
③二十匹の金魚にだ。④娘のクラスメート宅から⑤譲り受けた。（A～）すくってきたものが産卵し、今や五百匹、少し引き取ってもらえないか（～A）と⑥頼まれたのだ。⑦さっそく⑧水槽に⑨水草、水をきれいに保つジャリなどを買い求め、⑩無事、⑪リビングの一角におさまった。
②③このように、すぐに答えを出すのは、勿体ないです。ここは、後にもってくるようにして、全体の構成を工夫しましょう。
④⑫どちらかに統一。今回は⑫にしましょう。

（B～）五百匹の金魚の母となった⑫友人は、この夏をその世話に明け暮れたという。インターネットを駆使して育て方を勉強したそうで、たいていの質問にはスラスラと答えが返ってくる。自分の手で、卵から孵した稚魚は、可愛くて仕方がないのだとか。里親を探して、引き取ってもらったあとの心中は、わたしにも察せられる。（～B）
（B）この作品に直接関係無いので、省きましょう。
⑩削除。無い方が文章がひきしまります。

（C～）さて、縁あってうちに来たのは、目高ほどの大きさの、まだ色も薄い金魚である。大切に育てられたせいか、実にお利口さんだ。夜になるとちゃんと寝ているようだし、（～C）こちら⑬が近寄るとむこう⑭も寄って来る。⑮朝夕のエサの時間をわかっている⑯のだ。（D～）砂粒ほどの目玉でも、四十個となると、結構な圧力となる。目玉がしっぽを振ってわたしに迫ってくる。（～D）
⑯断定。文章を強める働きがあります。ここは、…らしく、…ようだ。のような推量形にしましょう。

（E～）去年、十六年を一緒に暮らした猫に死なれた。（～E）（F～）血統は良いはずなのに、手くせの悪い猫だった。買ってきたばかりの刺身をさらわれたことも、一度や二度ではない。晩年には腰が立たなくなり、下の世話も大変だった。（～F）死なれた（G～）悲しみはもちろん大きかったが、⑰重しのとれた感覚も、確かにあった。（～G）
⑰強調する為、鍵かっこを付けるとよいでしょう。

（H～）生きものを飼うことに、重しを感じ始めたのはいつからだろう。（～H）
（I～）物心ついたときには家に猫がいて、今までの人生のほとんどは、猫と一緒㉑だった。犬が⑱いたこともあるし、金魚はもちろん、カメ、ヤドカリ、ハムスター、文鳥、ヒヨコはニワトリになったし、卵を産ませようとウズラを飼った⑲こともある。⑳子どもの頃、生き物はただ、ともにあるもの㉒だった。犬の散歩はわたしの役目㉓だったけれど、行けないときには、母が代わってくれるとわかっていた。（～I）
⑱⑲同じ表現が続いています。⑳改行して下さい。㉑㉒㉓同じ語尾が続いています。

（J～）とするとやはり、一家の主婦となってからか。殊に、自分の手で、自分の子を育て始めてからは一層、そうなった気がする。（～J）（K～）重し、と書いたのは、なにげなくだけど、これはきっと、本当に重しなのだ。（～K）（L～）今更はずされても、フワフワ浮き上がって、地に足がつかなくなってしまう。（～L）
（M～）やっと二学期が始まり、昼間は自分の時間がとれるようになった。しかし、一人であっても、（～M）背中に四十個の目玉がある。
（N～）猫に死なれたとき、当分猫は飼わないと決めた。でも、当分っていったい、いつまでだろう？（～N）

原稿紙換算：3枚

◎構成について

スタートで金魚を譲りうけた時期を入れるといいでしょう。
スタート→夏休み前、私の→⑫→⑥→子どもが→（A）
→⑦→⑨→家にあった→⑧→入れて→⑤→③→⑪→（C）
→⑮→らしく→わたし→⑬→金魚たち→⑭→（H）
→（I）→（J）→（E）→（G）→（L）→
例：金魚たちを譲り受けたのは、こんな時期をしばらく過ごしたあとであった。
※1行あけて
（M）→②→（D）→
※ここに作者の「重し」の思いに対する結論を書くといいでしょう。
例えば、
でも、これくらいの「重し」ならば、ちょうどいいかと思っている。
などです。
なお、（N）は省きましょう。
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