講師・スタッフ紹介
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文章にはいろいろある。怒らせる文章もあれば、笑わせるもの、泣かせるもの、心を温めるものや怖がらせるものもある。
亡き藤本義一先生はこう言われた。
どんなものであれ、「切なさがないとあかん」と。
私たちは自分の思い通りにならない世界で生きている。戦渦に生きる他国に比べたら日本に生まれただけでも幸せと言えるかもしれない。それでも私たち日本人は、私たちなりに生きてゆく難しさにさらされている。
逃げられない宿命を背負っていたり、ある時はどうしようもない壁にぶつかったり、自分で認めたくない感情に翻弄されたりする。それを意識している文章と、そこを見せない文章とは大きく違う。それが「切なさ」という胸の奥の隙間がキュンとなるような感情を呼び起こすかどうか、という違いになる。
私にとって自分の文章に「切なさ」があるかどうか、これは厳粛な問いかけである。
人間の弱さや醜さを見つめているか、伝えたいテーマに誠実な取材をしているか、まっすぐな視点を持っているか、人間に愛があるか、それらを自分に問いかけていることと同じである。なぜならそれらが抜けていたら、文章に「切なさ」は浮かび上がって来ないから。
あなたにはあなたの人生でつかんだかけがえのない「切なさ」がある。そのあなたならではの「切なさ」を表現することは難しいことだが、その切なさは必ず人の共感や感動や思考を生む。素晴らしいことだと私は思う。それこそが他の誰も真似することのできない、あなたの魅力のあふれた文章である。
私は心斎橋大学の卒業生であり、多くの先生に貴重なご教示をいただいたことを心から感謝しているものである。
故藤本義一先生に直接習うことができた心斎橋大学のひとりの先輩として、現在の生徒さんにはそのお教えを時間の限り、できるだけ多くお伝えしたいと思っている。
あなたがあなたの魅力に溢れた文章をつかむこと、そのお手伝いをさせていただくことが私の分不相応な高望みである。
小説家/「芦屋倶楽部文学賞」「ニッサン童話と絵本のグランプリ」「浜屋・よみうり仏教童話大賞」「香・大賞」など、数々の賞に受賞・入選。「大阪オリンピック招致イメージソング」の作詞最優秀賞を受賞、朗読ミュージカルの脚本や、ラジオドラマ脚本も手掛ける等、幅広く才能を発揮し、平成22年4月、日本放送作家協会会員となる。
平成27年、時代小説「和心のものがたり」(YAMATO KOKOROもがたり)、令和元年、「藤川ヤヨイ脚本集」を出版。