受講生の作品

心斎橋大学ラジオシアター

中谷典子 さん
大学院
24期生(2010年度)
性別:女性

第2話:スカートをはいた翔平

この作品は、心斎橋大学のラジオドラマコンクールで選出され、2019年4月12日(金)ラジオ大阪にて放送されました。作品募集においての設定は、こちらをご確認下さい。

○登場人物

倉嶋翔平(20)主人公。女装することになった。
部長(22)翔平が所属するテニスサークルの部長。女装するきっかけを作った。
倉嶋萌(16)翔平の妹。頭がいい。
倉嶋慎吾(23)翔平の兄。頭がいい。チャーハンが得意。

 

SE 鳥の声や車の走行音が、窓を閉める音でシャットアウトされる。カーテンを引く音

翔平M「倉嶋翔平、二十歳。俺は今、自分の部屋でカーテンを閉め切り、鏡の前で自問自答している。今までだって、色んなことで迷ったり、悩んだりしてきた。だがしかし、今の俺が向き合っているものは、ワンピース。真夏の青い空が似合いそうな、白いノースリーブのワンピースだ。俺は今、それを着るべきか、やめるべきか、自問自答している。事の発端は、こうだ……」

BGM 優雅な雰囲気の音楽

SE 肉の焼ける音、食器の音(F・O)

翔平「あぁー、おいしかった! もう、腹いっぱいです」

部長「そうか、倉嶋。それは良かった」

翔平「でも、A5ランクのステーキなんて、本当におごってもらっていいんですか?」

部長「(笑)倉嶋は、我がテニスサークルの大事な部員だからな。文化祭もあるし」

翔平「文化祭? 何の話ですか?」

部長「……実は、倉嶋に頼みがあるんだ」

翔平「俺に頼み? 何ですか?」

部長「倉嶋、ミス男子コンテストに出てくれ」

翔平「えっ!? ミス男子コンテストって、文化祭伝統の、女装するやつですよね? あれには岡村が出るんじゃ?」

部長「それがアイツ、彼女ができたから、そういうのは出たくないって言い出して」

翔平「だからって、どうして俺なんです?」

部長「岡村が、倉嶋ならやってくれそうだって言うし、お前なら、まぁ似合うだろ?」

翔平「無理ですよ、俺、目立つの苦手だし」

部長「……そうか。なら、仕方ない」

翔平「(安堵)期待を裏切って、すみません」

部長「いや、こっちこそ突然悪かった。じゃあ、1万2千円だ」

翔平「はい?」

部長「A5ランクの肉は、ミス男子コンテストに出る奴にしか、おごれないんだ」

翔平「え? えーーっ!?」

(F・O)

 翔平M「というわけで、俺は鏡の前で白いワンピースと向き合っているのだ……。よし、ぐずぐず迷ってても仕方がない。ここは潔くワンピースを着よう、そうだ、俺は男らしくワンピースを着る!」

SE ファスナーやベルトを外す音、それらを投げ出す音

翔平M「(深呼吸)うーん、勢いで着てみたけど、やっぱりこれは俺には似合わないなぁ。そうだ。部長から、カツラも渡されたような……」

SE 紙袋をガサガサする

翔平「お、黒髪ロングのカツラかぁ。これどうやってかぶるんだ? こうかな?」

翔平M「あれ? カツラを被ると、かなり女の子っぽいのでは? 特別に可愛いわけじゃないけど、そこらへんにいる感じというか……。これなら優勝も最下位もない。俺の気楽なポジションも変わらないぞ!」

SE  お腹のギュルルという音

翔平「い、痛い。急にお腹が。トイレトイレ」

SE ドア開閉音、足音、水を流す音

翔平「ふぅー、焦ったー……。高級な肉に、お腹がびっくりしたかなぁ」 

SE 玄関の戸が開く 足音

萌「ただいまー。あれ? 誰もいないの?」

翔平「ひっ!(息を飲む)」

翔平M「ヤバイ、妹の萌が帰って来た!」

萌「ん? 誰かいる? 翔くん? 慎くん?」

翔平M「誰もいないっ、誰もいないんだ!」

SE 鍵がかかっていて、ドアが開かない

萌「ん? 誰かトイレに入ってるの?」

翔平M「終わった!」

萌「翔くん? 慎くん? どっち?」

翔平「(焦り)お、俺、俺、翔平」

萌「翔くんか。トイレ行きたいんだけど」

翔平「あっ、ごめん、紙が切れちゃってさぁ?」

萌「そうなんだ。取ってくるから待ってて」

翔平「ありがとう、まじ助かったわ!」

萌「翔くんってば、大袈裟(笑う)」

翔平M「我が家のトイレットペーパーのストックは、玄関脇の収納スペース。そこからトイレは見えない。つまり萌の死角を利用して、俺はトイレから出る。だがしかし、自分の部屋に戻る余裕はない。つまり今、俺が目指すべき場所は、ひとつ。トイレに近くて鍵のある場所、そう、お風呂だ!」

SE 開錠の音、足音、ドア開閉と施錠の音

翔平M「ミッションはコンプリートだ!」

SE 足音

萌「あれ? 翔くん?」

翔平「(ドア越し)ごめん、よく見たら紙あった。俺、ちょっとシャワー浴びるわ」

萌「え、あぁ。分かった」

SE ドア越しにトイレの水が流れる音

萌「(ドア越し)じゃあ、私、塾だから」

翔平「あぁ、気をつけて。いってらっしゃい」

SE 玄関の戸の音

翔平「あっぶねぇ……。疲れた(ため息)」

翔平M「でも俺は、妹にワンピース姿を見られるわけにはいかない。妹といる時の俺は、そういうキャラじゃないから」

翔平「(深呼吸)今度こそ、着替えるか」

SE  開錠、ドアの音、足音

慎吾「あ、萌、帰ってたのか」

翔平M「えっ?」

慎吾「萌……、じゃなくて、翔平なのか?」

翔平「(焦り)えっと、その、これは。あっ!」

SE  カツラが床に落ちる音

翔平M「予期せぬ兄の登場で、慌てた俺はカツラを床に落っことしてしまった。兄は黙って俺に近づき、カツラを拾って俺に被せた。え? なんでカツラ被せるの?」

慎吾「翔平、安心しろ。誰にも言わないから」

翔平「あ、うん。ありがとう」

翔平M「助かった、そう思えたのは一瞬だけ」

慎吾「今まで、苦しかっただろ。ごめんな、気づいてやれなくて」

翔平「へっ?」

慎吾「でも、もう大丈夫だ。うん、スカートも髪型も、よく似合ってる」

翔平「ちょっと待って、なんか勘違いしてる?」

慎吾「勘違い、とは?」

翔平「あの、この格好はさ、大学のイベントで頼まれて……。趣味とかじゃなくて」

慎吾「翔平は、女の子になりたいんじゃないのか!?」

翔平「(驚き)なりたくはないよ!」

慎吾「じゃあ、なんでそんなに可愛い格好を」

翔平「だから、大学のイベントでそういう余興があるんだよ! 今、言ったじゃん」

慎吾「そうか……。翔平を傷つけてはいかんと思って、ちゃんと聞いてなかった」

翔平「もう。昔から兄ちゃんは、融通がきかねぇんだから……」

慎吾「いやぁ、ごめんごめん(笑う)」

翔平「(ため息)なんかどっと疲れた」

慎吾「チャーハン作るけど、翔平も食うか?」

翔平「……食う」

SE 炒める音、調理器具のガチャガチャ

翔平M「倉嶋翔平、二十歳。兄にワンピース姿を見られた大学二年生……」

慎吾「翔平、皿取ってくれ」

翔平「はいはい」

SE 食器の音

慎吾「違う違う、チャーハンはフチが青い皿」

翔平「いいじゃん。融通がきかないなぁ」

慎吾「翔平は融通をきかせたがるなぁ(笑う)」

翔平「(呆れ気味)何だよ、それ」

翔平M「俺の兄ちゃんは、全国トップレベルに頭がいい。でも、融通がきかない頑固者、と思ってきたけど、どうやら違ったらしい。人間には、色んな面がある。分かっていたつもりだけど、俺はまだまだ未熟なカメレオンだったのだ。これからはもっと、注意深く周りを見よう。今以上に、完璧なカメレオン・ボーイになるために!」

 了

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