受講生の作品

心斎橋大学ラジオシアター

上野裕子 さん
大学院
30期生(2016年度)
性別:女性

第6話:母さんは魔女?

この作品は、心斎橋大学のラジオドラマコンクールで選出され、2019年5月10日(金)ラジオ大阪にて放送されました。作品募集においての設定は、こちらをご確認下さい。

 

【人物表】

倉嶋翔平(20)大学2回生

倉嶋久美(50)翔平の母。薬剤師。夫と薬局を経営

倉嶋慎吾(23)翔平の兄。大学院生。宇宙工学を専攻。

倉嶋萌 (16)翔平の妹。高校二年生。成績優秀で医学部志望。

 

SE 雨がしとしと降る音。

玄関のドアが開く音

 

翔平N「あれ? みんな出かけている時間なのに、エアコンがついてる」

 

   SE 廊下を歩く足音。ドアを開ける音。

 

萌 「翔兄。おかえり」

翔平「萌。学校は?」

萌 「早退した。なんだか熱っぽくて……」

翔平「そういえば、顔が赤いよ。大丈夫か?」

萌 「風邪かな。今、熱をはかったら、三九度近くあった」

翔平「ええっ! 寝てなきゃだめじゃないか。それとも医者行くか?」

萌 「大丈夫よ。部屋で寝てるわ」

翔平「そうか? しんどかったら言うんだよ」

萌 「うん。ありがとう」

 

   SE 萌が階段を上がる足音。部屋の開閉音。

 

翔平N「萌のやつ、勉強のしすぎだよな。いくら医学部を目指してるからって」

 

   SE 冷蔵庫を開け、飲み物を出す音。ごくごくと飲む。

 

翔平N「ふぅ~。萌、薬とか飲んだのかな? こんな時、母さん、どうしてたっけ」

 

M 

 

(幼稚園児の)翔平「う~ん。う~ん」

久美「翔平ちゃん。具合はどお?」

翔平「体が熱くて、しんどいよぉ」

久美「大丈夫。ちゃんと寝てればすぐよくなるわ。はい、これを飲んで」

翔平「これ? この、ドロドロしたの?」

久美「少し甘くて、美味しいわよ。熱いからスプーンで少しずつ……ふーふーして、はい、あ~ん」

翔平「あ~ん。あ、甘い」

久美「でしょ? 翔平ちゃんが、早く良くなるように、母さんが作った特別なお薬よ。誰にも内緒だからね」

翔平「内緒……。わかった!」

 

  M

 

(現在の)翔平「あの後、ぐっすり眠って、目が覚めたら熱が下がって、すっかり良くなってたっけ。あれはどんな薬だったんだろう。赤くて、ドロッとしてて、何かを煮詰めたみたいだったな」

 

   SE 携帯電話の着信音

 

翔平「兄さん?」

慎吾「翔平。今、家か?」

翔平「そうだけど」

慎吾「悪いが、今夜、僕宛の宅配便が届くから、必ず受け取って欲しいんだ。居留守つかうなよ」

翔平「いいけど。それより兄さん、萌が高熱を出して寝てるんだ」

慎吾「萌が? 風邪か?」

翔平「そうみたい。どうすればいいかな」

慎吾「そうだなぁ。夕方まで様子を見て、辛そうだったら医者に連れていくか、母さんに連絡してみたら?」

翔平「あの、兄さん。変なこと聞くけど……子供の頃、母さんが作った、赤いドロドロした薬、飲んだことなかった?」

慎吾「赤いドロドロした薬? なんだよそりゃ」

翔平「……知らなきゃいいんだ。俺が小さい時に作ってもらって、それを飲んだらすぐに熱が下がった記憶があったから」

慎吾「ふ~ん、何だろう。母さん、薬学部出だし、薬の研究には昔から熱心だったけど。案外、魔法使いのお婆さんが、鍋でぐつぐつ煮たようなもんだったりしてな」

翔平「なんだよそれ」

慎吾「じゃあ、宅配便と、萌のこと、頼んだから」

 

   SE 電話の切れた音

 

翔平N「兄さん。いつも自分の要件だけなんだから。それに宇宙工学やってるくせに、魔法使いのお婆さんって、非科学的な。母さんが魔女ってか?」

 

   SE 食器棚や収納庫を開け閉めする音。食器や鍋がぶつかる音

 

翔平N「一応、気になって、台所を調べたけど、薬も、それらしき材料も、魔女が使いそうな鍋もない……まっ、そりゃそうだ。いかんいかん、俺、パニクッてる」

 

   SE 玄関のドアが開く

 

久美「ただいま」

翔平「おかえり。母さん、連絡してごめん。」

久美「ううん、それより、萌の具合はどう?」

翔平「起こしたら悪いと思って、見に行ってないよ。自分の部屋に入ったきりだ」

久美「そお。じゃあ、ちょっと見てくるわね」

 

  SE 久美が階段を上がる音

     萌の部屋のドアを開ける音

 

久美「萌」

萌 「あ。お母さん。おかえりなさい」

久美「熱はどお? あら、少し下がった?」

萌「ひと眠りしたら、汗かいてて」

久美「本当ね。じゃあ、着替えを持ってくるから。今夜はこのまま寝ときなさいね」

萌「うん」

 

   M

 

久美「萌、熱が下がったみたい。大した事なさそうだわ」

翔平「そうか、良かった。俺一人じゃ、どうしたらいいかわからなくて。……それより母さん、俺が子供の頃、熱を出した時に、特別な薬を作ってくれたの覚えてる?」

久美「特別な薬?」

翔平「赤くて、熱くて、ドロドロしてるやつ。それを飲んだら、次の日にはすっかり良くなってた」

久美「赤くてドロドロ? そんな薬あったかしら」

翔平「ええっ! 忘れたの? 母さん、『誰にも内緒』って言ってたんだよ」

久美「誰にも内緒って……。ああっ! あれだわ。翔平、そんなふうに、覚えてたの? アハハ!」

翔平「何? 何がおかしいんだよ」

久美「だって、あれ、ただの葛湯よ」

翔平「葛湯?」

久美「そう。あなた、熱を出して、ご飯も食べられなかったからね。市販のじゃなくて、母さんが作ったの。お砂糖と生姜、それに梅干も入れたから、ピンク色になったんだわ。真っ赤じゃなかったわよ」

翔平「じゃあ、どうして内緒って……」

久美「慎吾や萌が知ったら、『私にも作って』ってうるさいからよ。それだけ!」

翔平「なぁんだ……やっぱり、魔女じゃなかった」

久美「魔女?」

 

   SE 朝、雀の声。台所のドアが開く音。

 

萌 「おはよう、翔平兄さん。みんな、もう、出かけちゃったわよ」

翔平「萌、起きてていいのか?」

萌 「熱が下がったから、もう大丈夫よ」

翔平「でも、今日はゆっくり休めよ」

萌 「そうする。ねえ、それよりこれ見て。慎吾兄さんにもらったトートバッグ」

翔平「あ、ゆうべの宅配便の……」

萌 「勉強ばかりじゃなくて、切り替えも必要だから、これ持って遊びに行けって。慎吾兄さん、なんて優しいの」

翔平「……良かったな。……それにしても、父さんたち、今朝は早くないか?」

萌 「母さんが、『風邪をひいたお客様に葛湯を勧める』とか言い出して、父さんと慌ただしく出て行ったわ。『親子の絆で絶対売れる』とか言ってたっけ」

翔平「ああ。母さん、魔女より凄いや」

 

   SE 玄関のドアが開く音

 

翔平「じゃ、行ってくる。萌は休んどけよ」

萌 「は~い。行ってらっしゃい」

 

   SE 翔平の足音

 

翔平N「子供の頃の記憶って、あやふやなもんだな。市販のお湯で溶くだけの葛湯ぐらい、萌に作ってやるんだった。バッグもらって嬉しそうだったし、俺が心配してたことなんか忘れちゃうよな」

 

   SE バスに乗る音

 

翔平N「それにしても、病人とかお年寄りを、見守りやすい家って作れないかな。そうだ。いつかきっと、俺が考えてみよう!」

 

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